今、ホテルの仕事に興味がある。特に、若者向けのユースホステルとかの仕事。
大学生の時、貧乏旅行で泊まった国内外のゲストハウスやユースホステルが、私の中で自由と楽しさの象徴になってる。日常を置きっぱなしにして遠くまでやってきた旅人たちが集う場所は、どこか現実離れしてて、人と人の垣根が不思議と低かった。世界中の若者が集まり、居合わせたもの同士で出かけたりすることもあった。オーナーは大抵旅好きで、どこか変わった人が多かった。
特に記憶に残っているユースホステルをいくつか挙げてみる。
鉄輪ゲストハウス
大分県別府にある、鉄輪温泉にあるゲストハウス。住宅街の中にある普通のお家と言った感じ。温泉が多く、町中から湯気が立っているような街で、歩いて行ける距離に日帰りで入れる温泉がたくさんある。オーナーのおじさんはバイク好きで、旅人を嬉しそうに迎えてくれる。押し付けがましくなく、他人行儀でなく、居心地が良い人。2月か3月でまだ寒かったけど、お家にはストーブが炊かれていて暖かかった。同じ日に学生で、自転車だと思うんだけど、男の子が1人居合わせて、おじさんとみんなでおしゃべりした。
北海道稚内にあるホステル。温泉併設で、宿に泊まると使える。温泉は近所の人も利用するから、地元のおばちゃんに「どこからきたの」と話しかけられたりする。「稚内の冬は、雪はそんなにだけど、風が強くてそのせいでものすごく寒いんだよ」みたいな話をした。お湯がめちゃくちゃ熱くて入ってられなかった。オーナーは癖の強いおばちゃんで、リビングにはミラーボールがあって、毎夜宿泊客で晩酌をする。ここで出会って結婚したカップルが多いとかで、噂を聞きつけて泊まりに来てるお姉さんもいた。
ログ由縁
北海道富良野にある元ライダーハウス。美瑛・富良野あたりは丘陵地帯なので起伏が激しく、ログ由縁は高台にあったので行くのが大変だった記憶。オーナー自ら作ったとかで、手作り感がすごいログハウスだった。常連さんも多くて、旅人に愛されてる感じ。買ってきたワインとかチーズとかあけて食べた思い出。夏とはいえ夜は冷えるんだけど、部屋も寝具もしっかりした感じであったかかった。外国人も多くて、一緒の部屋はオランダ人の女性グループ、キッチンで料理してるときは台湾の家族と一緒になった。今調べたら、オーナー変わって事業拡大している模様。
長野県安曇野のゲストハウス。高台にあって、一面の田んぼビューとその先に日本アルプスの青い山々が臨める。屋上テラスみたいなところがあって、そこで朝やけを見ながらチャイをご馳走になった。なぜチャイかって、オーナーの奥様がミャンマーの方だから。そこここにミャンマーグッズが置いてあって独特の雰囲気。超人懐っこいワンコがいて、一緒に遊べる。いわさきちひろ美術館が近い。安曇野の澄んだ空気が懐かしい。
あひるやゲストハウス
台湾、高雄のホステル。ビルの中にある。台北の飛行場からほぼ丸一日バス乗ってたどり着いて、「あぁやっと着いた……!」って安心した記憶。若者ばっかりで、知り合った人同士でご飯行ったり。フェイスブック交換していまだに繋がっている人もいるけど、残念ながらあまり連絡は取ってないな。日本のライダーハウスと比べると、シャワールームとか部屋数とかも多くて「大型グローバルゲストハウス」って感じ。高雄の町の、暑くて雑多な感じがよかったな。
藍色天空青年旅舎
中国福建省の武夷山の麓にあるホステル。Googleマップに引っかからないからもう閉じているかも。留学中に同級生のカナダ人とアメリカ人の3人で行って、オーナーのおじさんと楽しく過ごした思い出。おじさん面倒見良くて犬のお散歩がてら近所を案内してくれた。リビングにでっかいオーディオセットがあって、暑すぎて出かける気を失った私たちは、音楽かけて踊って遊んで過ごしたなぁ。夜はおじさんの友達とか同じ日に泊まってた人たちとかみんなでご飯買ってきて食べた記憶。
北京青年酒店(beijing sunrise youth hostel)
中国北京のユースホステル。レセプションも部屋もシャワールームも効率的で、まさに大型国際ユースホステルって感じ。いろんな国の人が来てた。猫がいて、レセプション前のベンチで中国人の男の子と猫と遊んだ記憶。外のベンチでタピオカ飲んだりもできて、カナダ人(多分)とダラダラ喋ったりご飯食べに行ったりした。ここはオーナーがやってるって感じじゃなく、若いバイトっぽい中国の女の子たちが仕切ってたな。市内バスで北京市内を走り回ったな。今日記見たら12泊してて、学生って暇〜。
今思えば、学生時代は怖いもの知らずに随分いろんなところに突っ込んでいっていた。勢いだけで、下調べもそこそこに。勇気があるというか、想像力がなかったというか。危ない思いをしなかったのは、ただ運が良かっただけ。親は心配だっただろうなぁ。
随分面白い体験をしたと思う。ちょっとしすぎたくらい(おそらく経年フィルターで美化もされている)。あの頃に比べると、ここ数年はあまり思い切った挑戦をしていない気がしてしまう。コロナで世界が動きを止めてしまったせいか、私自身の生き方が慎重になったせいか。今だって行こうと思えばどこへだって行けるはずなんだけど、なんだかあまり勢いが出ない。
年か。年を気にしているのか。大人だしちゃんとしなきゃ、ふらふらしてる場合じゃない、と。あとはあれか、転ぶ痛みを知ったから、思い切り走るのを躊躇うようになったか。どっちもあるな……。
ホテルの仕事に興味がある。なら、やってみればいいのに。けど大人になった私が思いを固めるには、もう少し時間がかかりそう。